転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
うつむいて押し黙る結乃の様子にうっそりと笑みを深めながら、レイラが畳みかける。
「本当はさっき、気づいていたの。あなた、私と春人が一緒にいるところを見ていたわよね?」
「え……」
あのとき、レイラに気づかれていた?
思いがけない発言にまた身体をこわばらせた結乃に構わず、レイラは続ける。
「私たちを見たときのあなた──『負けた』って、顔をしていたわ。そして自分の夫が見知らぬ女と親しげにしてるっていうのに、何もせずしっぽを巻いて逃げた。戦うどころか声をかけることもしないなんて、妻失格だと思わない?」
何も、良い返せない。ただこぶしを握りしめることしかできない。
彼女の言葉ひとつひとつが、結乃の心に鋭く刺さって痛みを生んだ。
「ねぇ、教えて。あなたにはどんな価値があって、春人の隣にいられてるの? 自分以外に代わりはできないって堂々と言えるような何かが、あなたにはあるのかしら?」
──絶世の美女で。会社のトップを任せられる才女で。自信に満ちあふれていて。
たぶん自分なんかよりずっと、あのひとの隣にふさわしい女性。
「かわいそうだけど、あなたはたぶん利用されてるのね。春人はきっとあなたのことなんて、都合のいいときに抱ける家政婦としか思ってないはずよ」
自惚れなんかじゃなく、きっと自分は大切にされている。
けれどだからといって、愛されているわけではない。
本当は、春人もずっと……レイラのことを、忘れられずにいたんだとしたら?
前世の記憶に引っぱられてしまったせいで、本当の気持ちが押さえつけられているんだとしたら?
「本当はさっき、気づいていたの。あなた、私と春人が一緒にいるところを見ていたわよね?」
「え……」
あのとき、レイラに気づかれていた?
思いがけない発言にまた身体をこわばらせた結乃に構わず、レイラは続ける。
「私たちを見たときのあなた──『負けた』って、顔をしていたわ。そして自分の夫が見知らぬ女と親しげにしてるっていうのに、何もせずしっぽを巻いて逃げた。戦うどころか声をかけることもしないなんて、妻失格だと思わない?」
何も、良い返せない。ただこぶしを握りしめることしかできない。
彼女の言葉ひとつひとつが、結乃の心に鋭く刺さって痛みを生んだ。
「ねぇ、教えて。あなたにはどんな価値があって、春人の隣にいられてるの? 自分以外に代わりはできないって堂々と言えるような何かが、あなたにはあるのかしら?」
──絶世の美女で。会社のトップを任せられる才女で。自信に満ちあふれていて。
たぶん自分なんかよりずっと、あのひとの隣にふさわしい女性。
「かわいそうだけど、あなたはたぶん利用されてるのね。春人はきっとあなたのことなんて、都合のいいときに抱ける家政婦としか思ってないはずよ」
自惚れなんかじゃなく、きっと自分は大切にされている。
けれどだからといって、愛されているわけではない。
本当は、春人もずっと……レイラのことを、忘れられずにいたんだとしたら?
前世の記憶に引っぱられてしまったせいで、本当の気持ちが押さえつけられているんだとしたら?