転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「あ、やっぱりここにいたのか!」


 現れたのは仁で、ソファーに座るレイラを見るなり呆れた様子で声を上げた。

 軽く呼吸を乱している彼は、そのままリビングの中まで入ってくる。


「こんばんは、結乃さん。騒がしくして申し訳ない」
「あ、いえ……」


 つい反射的に答えしまったが、結乃は今日何度目かの突然の訪問者にポカンと気の抜けた顔だ。

 仁はひとこと「おまえ、置いてくなよ!」と春人に文句を言ってから、先ほどから黙ったままのレイラへと向き直る。


「もうわかっただろ? ハルはいつまでも、おまえのお気に入りの人形じゃねぇんだ」
「……うるさい……」


 諭すような仁の言葉にレイラがボソリとつぶやいたと思ったら、ギッと強く睨みつけられて結乃は一瞬たじろぐ。

 けれどもレイラはそれ以上何も言わず、勢いよくソファーから立ち上がった。


「……馬鹿みたい。帰るわ。心配しなくても、こんなところもう二度と来ないから」
「夫の友人としてなら、構わないです」


 吐き捨てるような彼女のセリフに対し、結乃は自分でも驚くくらい自然とそう返していた。

 レイラも意表をつかれたのか、大きな目を見
開いて結乃に向ける。それからふっと、息を吐いた。


「……これ、返すわ。邪魔したわね」


 手にしていたバッグの中から春人のボールペンを取り出し、ローテーブルの上に置く。

 レイラはそのまま、こちらを振り返ることなくリビングを出て行った。
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