転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 キスを交わしながら、互いの衣服を脱がしていく。素肌をかすめる相手の指先が、一心に自分へと注がれる眼差しが、興奮を高めて体温を上げた。

 揃って一糸まとわぬ姿となっても、涼しくなるどころか熱は溜まっていくばかりだ。


「ん……っ」


 春人の一挙手一投足すべてに反応し、結乃の口からは堪えきれない甘い吐息がこぼれた。

 彼との行為はいつだって気持ちがいいけれど、今日は今までになくどこもかしこも敏感になってしまっている気がする。

 それは、本当の意味で想いを通じ合わせることができたからなのだろうか──なんてことを考えていられたのは、ここまでだった。

 目の前の行為に集中できていなかった結乃を咎めるような強引さで、春人が本格的に彼女を陥落させようと手を尽くす。

いとも簡単に高みへと導かれてしまった結乃が荒い呼吸を繰り返していると、その耳もとで春人が楽しげに笑った。


「かわいかった」
「っもう……!」


 翻弄されてばかりの悔しさに不満げな眼差しを向けるも、うるんだ目で頬を上気させていてはまったく迫力がない。

 予想通り春人はなんのダメージもなく口角を上げたまま、宥めるように結乃の頬へキスを贈る。


「そんなにかわいい反応ばかりしないでくれ。……なあ、結乃、お願いがある」
「え……?」


 改まった言葉に疑問の眼差しを向けると、彼は覆いかぶさっている結乃の顔の横についていた片手を折り曲げ、さらに距離を詰めた。


「今日は、どうしても──何にも邪魔されないで、結乃を感じたい」
「……ッ」
「いいか……?」


 直接耳から息を吹き込むように熱っぽくささやかれ、身体がいっそう甘く疼く。一度唾を飲み込むだけの間のあと、結乃は春人の顔を見られないまま控えめに小さくうなずいた。

  初めて、何にも隔たれずに春人と触れ合うことができる──自分でも驚くくらい、不安以上の圧倒的な幸福感がわき起こって結乃の胸を熱くした。

 春人もそれに気づいているのか、結乃を組み敷いたままふ、と吐息だけで笑うと、やわらかなキスを落とす。

 そうしてとうとう、ふたりの身体が隙間なく重なり合って──その瞬間、まるで天命を受けるかのごとく、春人の脳裏にある光景がひらめいた。
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