転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 金曜の夜。ふたりはいわゆる“子どもを授かるかもしれない行為”をしたわけだが、自分の生理周期的に可能性は低いだろうと、結乃は一応春人に伝えていた。

 けれどもその日から今日までの2日間、なんとなくソワソワと結乃の身体を気遣う言動ばかりしてくれる春人に、たった今月のものがやって来てしまったことを告げるのはなかなか勇気がいることで。

 結局、冒頭のような曖昧な表現になってしまったのだが……春人は結乃の言わんとしていることを正しく理解し、返事をしてくれたのだ。


「結乃、おいで」


 閉じた雑誌をローテーブルに置いた春人が、自分のひざを示すように結乃に向かって両手を広げる。

 とろけるようなその甘い声音と表情に逆らえるだけの経験値は、残念ながら結乃にはない。微かに頬を赤くしながら、結乃は腰を浮かせておそるおそる春人のひざに乗った。


「お邪魔します……」
「ん」


 短く答えて、すぐに春人は結乃の腹部に両手を回す。先ほどの報告を受けてか、添えられた手にはあまり力が込められていない。むしろ、へその下を覆う手のひらの温度がじんわり心地良かった。

 そうして背後から抱きかかえる形で首筋に鼻先を埋めてきた春人に、結乃は思わずピクンと身体を揺らす。


(うぅ……さすがにまだ、全然慣れない……)


 想いが通じ合ってからというもの、春人は今まで以上に隠すことなく結乃に好意を伝えてくれるし、今のようなスキンシップも頻繁になった。

 耐性のない結乃にとってはいつどこで爆弾を投下されるかわからず油断できないこの状況に、ドキドキしっぱなしである。


「結乃は、いつもいい匂いがする。ずっとこうしていたい」
「あぅ……」
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