転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
首をひねって背後の彼を振り返りつつ、思わずツッコむ。
そうして結乃は、「もう」と呆れ混じりにため息を吐いた。
「前世からの、ご友人ですよ? 大切にしないと」
彼女のセリフに対し、春人は眉根を寄せてわかりやすく渋面を作る。
「そう言われても、憶えていないんだから仕方ない」
──結局。春人の中に、前世の記憶は未だよみがえっていない。
けれども仁本人の許可を得て彼が前世でも春人の友人だったことは教えているので、春人に言わせると「そんなに長く俺はアイツに振り回されているのか……」と頭が痛いらしい。
前世の記憶があってもなくても、春人は結乃にとって大切な人であることに変わりはない。
だけど、少しだけ……ほんの少しだけ、寂しいと思ってしまう気持ちも結乃の胸の片隅にあるのだが、春人には内緒だ。
「まあでも、そうか……もし俺に前世の記憶が戻ったら、その頃のきみとの思い出も共有できるようになるのか」
ひとりごとのようにつぶやく春人の視線の先には、ダイニングテーブルで今日も室内に彩りを与えてくれている花がある。
ふと、結乃は嫌な予感を覚えた。
「……まさかとは思いますけど、花瓶で頭をぶっても記憶は戻らないと思いますよ」
「そうか」
どうやら、結乃の考えは的中したらしい。顔色を変えることなくうなずく彼の腕の中で、その突飛な思考につい脱力してしまう。
「相変わらず結乃は俺の思考を読むのが上手だな」と感心したように頭を撫でられたが、果たしてここはよろこぶべきところなのだろうか。
冷血に見えて、意外と情に厚い。
完璧に見えて、意外と天然気質。
淡白に見えて、意外と愛情深い。
そんな彼に、きっと結乃の方こそ、この先も翻弄されてばかりなのだろう。
そうして結乃は、「もう」と呆れ混じりにため息を吐いた。
「前世からの、ご友人ですよ? 大切にしないと」
彼女のセリフに対し、春人は眉根を寄せてわかりやすく渋面を作る。
「そう言われても、憶えていないんだから仕方ない」
──結局。春人の中に、前世の記憶は未だよみがえっていない。
けれども仁本人の許可を得て彼が前世でも春人の友人だったことは教えているので、春人に言わせると「そんなに長く俺はアイツに振り回されているのか……」と頭が痛いらしい。
前世の記憶があってもなくても、春人は結乃にとって大切な人であることに変わりはない。
だけど、少しだけ……ほんの少しだけ、寂しいと思ってしまう気持ちも結乃の胸の片隅にあるのだが、春人には内緒だ。
「まあでも、そうか……もし俺に前世の記憶が戻ったら、その頃のきみとの思い出も共有できるようになるのか」
ひとりごとのようにつぶやく春人の視線の先には、ダイニングテーブルで今日も室内に彩りを与えてくれている花がある。
ふと、結乃は嫌な予感を覚えた。
「……まさかとは思いますけど、花瓶で頭をぶっても記憶は戻らないと思いますよ」
「そうか」
どうやら、結乃の考えは的中したらしい。顔色を変えることなくうなずく彼の腕の中で、その突飛な思考につい脱力してしまう。
「相変わらず結乃は俺の思考を読むのが上手だな」と感心したように頭を撫でられたが、果たしてここはよろこぶべきところなのだろうか。
冷血に見えて、意外と情に厚い。
完璧に見えて、意外と天然気質。
淡白に見えて、意外と愛情深い。
そんな彼に、きっと結乃の方こそ、この先も翻弄されてばかりなのだろう。