転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「さ、そろそろお茶の準備をしますね」


 自分を拘束する彼の手をやんわりと振りほどき、立ち上がった。

 そのままキッチンへ向かおうとしたら名前を呼ばれ、結乃は再び身体ごと振り返って春人を見る。


「はい? ……っわ、」


 思いがけなく彼の手が腰に回ってきて、軽く身体を引っぱられてしまった。

 ソファーに座ったままの春人が結乃の腰に手を回し、いつもより低い位置で正面から抱きしめる。


「少し前までは、自分の子どものことなんて上手く想像できなかったが……今はいろいろと、考えが膨らむ」


 この体勢だと、表情が見えない。が、そんなことをつぶやく春人の声音は、たしかにどこか弾んでいて。

 最愛の夫にやわらかく抱きしめられながら、結乃はくすりと笑った。


「ふふっ。私もです」


 答えながら、自分の胸もとにある彼の髪を子どもにするように優しく撫でる。

 しばし彼はされるがままでいたが、結乃が頭のてっぺんにキスを落とすと顔を上げ、彼女の後頭部を片手で引き寄せた。


「どうせするなら、こっちがいい」


 鼻先が触れ合う距離でそう言って、あっさり唇を重ねる。

 頭の片隅では流されている場合ではないとわかっているのに、結乃は心地良いキスにとろりと目を閉じてしまった。


 前世からの付き合いは長くとも、夫婦としてはまだまだ始まったばかり。きっとこれからたくさんの出来事を通して、また自分は、かけがえのないこのひとに何度でも恋をするのだろう。

 ふたりは互いに同じことを考えながら、まだ見ぬ未来へ思いを馳せた。










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