転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「ああ。たしかに、鈍そうだ」
「えっ、そこ納得しちゃいます……? そりゃあ私はたしかに、黒須さんみたいな引き締まった身体つきじゃないですけど……」


 自分で言いながら、腰あたりの肉を親指と人差し指で軽く挟んでみる。普通につまめて悲しくなった。

 ひそかに精神的ダメージを受ける結乃は、そのせいで次に春人が発したひとことへの反応が遅れる。


「『春人』でいい」
「……えっ?」


 パッと顔を上げた。目が合うと、真剣な表情の彼は言葉を続ける。


「さっきは名前で呼んだだろう。『黒須さん』じゃなく、『春人』でいい」
「えぇ!? や、あの、それは」


 予想外すぎるその申し出に、結乃は思わずうろたえた。


(いや、さっきのはついポロッと漏れちゃっただけで……! 今のこのハルトは、ハルトだけどハルトじゃないし……!)


 ぐるぐると考え、自分でもわけがわからなくなってくる。

 そんな結乃の動揺なんてお構いなしで、さらに春人が畳みかけた。


「きみのことも名前で呼びたい。構わないか?」
「わ……っえ、えと、か、構いませんけど……っ」


 しどろもどろに答える彼女の頬は、赤く染まっている。

 結乃が許可をくれたことに安堵し、春人は柔らかく微笑んで彼女を見つめた。


「ありがとう。結乃」
「……ッ」


 瞬間、ドキンと大きく胸が高鳴って、結乃は言葉を失う。
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