転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「あの……今回のチョコは、既製品の間違いなく美味しいものにしたんですけど」
「ん?」
言葉を切った結乃に小首をかしげた彼を見上げながら、はにかんだ。
「来年のバレンタインは、がんばって手作りしますね。楽しみにしていてください!」
宣言し、結乃は両手のこぶしをギュッと握ってガッツポーズをしてみせる。
すると、なぜか春人が固まった。彼の反応を不思議に思って呼びかけるより早く、目の前に影ができて──そのまま結乃は、自分よりも大きな身体に抱きすくめられる。
「ふあっ?! えっ、あの、春人さ……っ?!」
突然の抱擁に驚き、動揺する彼女の口から慌てた声が上がった。
春人の右手は結乃の後頭部、左手は腰にあって、互いの身体はぴったりと密着している。
彼女をすっぽり腕の中に収めてしまっている春人は、自分の下にあるやわらかな黒髪に顔をうずめながら熱い吐息を漏らす。
(結乃はあたりまえのように、1年後も俺と一緒にいてくれるつもりなのか)
手を出さないと、決めているのに。結乃への愛しさが臨界点に達して、抱きしめずにはいられなかった。
来月の末には、結乃は現在住んでいる実家を出て、春人の所有するマンションでともに暮らし始めることになっている。
初めて出会ってから、今日でまだ1ヶ月半ほどだ。にもかかわらずここまで強引に話を進めたのは、一刻も早く結乃を自分のものにしたいという、春人の独占欲の表れだった。
結乃がどうして、自分のことを受け入れてくれたのか──ハッキリとした理由を、春人は彼女本人に訊ねることができないでいる。
……『誰でもよかったから』、なんて。もしそんな答えをアッサリ返されてしまったらと思うと、気にはしていても実際口にすることができなかったのだ。
「ん?」
言葉を切った結乃に小首をかしげた彼を見上げながら、はにかんだ。
「来年のバレンタインは、がんばって手作りしますね。楽しみにしていてください!」
宣言し、結乃は両手のこぶしをギュッと握ってガッツポーズをしてみせる。
すると、なぜか春人が固まった。彼の反応を不思議に思って呼びかけるより早く、目の前に影ができて──そのまま結乃は、自分よりも大きな身体に抱きすくめられる。
「ふあっ?! えっ、あの、春人さ……っ?!」
突然の抱擁に驚き、動揺する彼女の口から慌てた声が上がった。
春人の右手は結乃の後頭部、左手は腰にあって、互いの身体はぴったりと密着している。
彼女をすっぽり腕の中に収めてしまっている春人は、自分の下にあるやわらかな黒髪に顔をうずめながら熱い吐息を漏らす。
(結乃はあたりまえのように、1年後も俺と一緒にいてくれるつもりなのか)
手を出さないと、決めているのに。結乃への愛しさが臨界点に達して、抱きしめずにはいられなかった。
来月の末には、結乃は現在住んでいる実家を出て、春人の所有するマンションでともに暮らし始めることになっている。
初めて出会ってから、今日でまだ1ヶ月半ほどだ。にもかかわらずここまで強引に話を進めたのは、一刻も早く結乃を自分のものにしたいという、春人の独占欲の表れだった。
結乃がどうして、自分のことを受け入れてくれたのか──ハッキリとした理由を、春人は彼女本人に訊ねることができないでいる。
……『誰でもよかったから』、なんて。もしそんな答えをアッサリ返されてしまったらと思うと、気にはしていても実際口にすることができなかったのだ。