転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「まあ、たとえ私がそのイケメンさんを気に入ったところで、相手が同じように気に入ってくれるとは限らないし」
「大丈夫よお! 結乃ちゃんは美人なんだから、自信持って!」


 美智代の身内贔屓なお世辞に苦笑しつつ、「ありがとう」と礼を伝える。

 身長152センチと小柄な体格の結乃は、色白の肌にタレ目がちな丸い二重の瞳、高くも低くもない鼻に小さめの唇という、特段人目を惹くとはいえないいたって普通の容姿だと自分で認識している。

 少し茶色がかった黒髪を肩の上でふんわり内側にカールした髪型は、大学を卒業後小学校の養護教諭として勤め始めてから、ほとんど長さを変えたことがない。
 これ以上伸ばして毎朝結ばなくてはいけないのは面倒だし、かといって今より短くすると落ちつかせにくくなる。これが結乃にとって1番扱いやすい、ベストな長さなのだ。

 毎日仕事に追われ、けれども休日になれば友人とランチやショッピングを楽しんだり、ひとりで映画を観に行ったりして適度にリフレッシュする。
 外見も中身も、“普通”の域を出ない。
 だけどそんな結乃には、唯一世間一般的な“普通”の枠からはみ出る特殊な“秘密”があった。

 もし、この“秘密”を知ったら──きっとたいていの人間は気味悪く思ったり、奇異なものを見る眼差しを自分に向けるようになるだろう。
 だからこそ結乃は今年で29歳になるこれまで、異性と深い付き合いをすることに対しても積極的になれないできた。
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