転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
(結婚に憧れがないわけじゃないんだけど……いざ自分がってなると、想像つかないんだよなあ)
たったひとりの誰かのために生きたいと思う自分。たったひとりの誰かと、一生添い遂げたいと思う自分。
考えてみても、やはりピンと来ない。結乃にとっての生きがいは、できるだけ多くの人のために心血を注ぐことにある。
“昔”も、今も……それは、変わらず彼女の中心にある想いだった。
「あっ、もうお相手の方いらしてるわ!」
ホテルの1階にあるラウンジの出入口まで来たところで、美智代が声を上げた。
その言葉を聞いて、結乃は己の思考からハッと意識を戻す。
叔母の視線を追った窓際のテーブル席に、男女の姿を見つけた。顔は、まだよく見えない。
今さら訪れた緊張に身体を強ばらせながら、叔母のあとについてラウンジの中へと足を踏み入れた。
「すみません黒須さん、遅れてしまいまして」
「ああ木野さん。いえいえ、こちらも先ほど到着したばかりでして」
『木野』は、美智代の苗字だ。その美智代が言った『くろす』というのが、相手の苗字なのだろう。
相手方のいる席までやって来たものの、当事者であるはずの結乃は緊張や気恥ずかしさからなかなか顔を上げられないでいた。自分の履いているパンプスのポインテッドトゥを見つめながら、身体の前でソワソワと両手を合わせる。
「ほら結乃ちゃんも、ご挨拶しましょ」
ひと通りテンプレートなやり取りを済ませた美智代が、いよいよ結乃に話を振った。
もう、なるようになれだ。結乃はこっそり息を吐き出して覚悟を決め、顔を上げる。
たったひとりの誰かのために生きたいと思う自分。たったひとりの誰かと、一生添い遂げたいと思う自分。
考えてみても、やはりピンと来ない。結乃にとっての生きがいは、できるだけ多くの人のために心血を注ぐことにある。
“昔”も、今も……それは、変わらず彼女の中心にある想いだった。
「あっ、もうお相手の方いらしてるわ!」
ホテルの1階にあるラウンジの出入口まで来たところで、美智代が声を上げた。
その言葉を聞いて、結乃は己の思考からハッと意識を戻す。
叔母の視線を追った窓際のテーブル席に、男女の姿を見つけた。顔は、まだよく見えない。
今さら訪れた緊張に身体を強ばらせながら、叔母のあとについてラウンジの中へと足を踏み入れた。
「すみません黒須さん、遅れてしまいまして」
「ああ木野さん。いえいえ、こちらも先ほど到着したばかりでして」
『木野』は、美智代の苗字だ。その美智代が言った『くろす』というのが、相手の苗字なのだろう。
相手方のいる席までやって来たものの、当事者であるはずの結乃は緊張や気恥ずかしさからなかなか顔を上げられないでいた。自分の履いているパンプスのポインテッドトゥを見つめながら、身体の前でソワソワと両手を合わせる。
「ほら結乃ちゃんも、ご挨拶しましょ」
ひと通りテンプレートなやり取りを済ませた美智代が、いよいよ結乃に話を振った。
もう、なるようになれだ。結乃はこっそり息を吐き出して覚悟を決め、顔を上げる。