転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 結乃が入浴を終えると、入れ替わりで春人がバスルームへと消える。


(そういえば、すっぴんを見られるのも初めてだ……)


 落ちつかない気持ちで肌の手入れをしながらそんなことを考え、ますます心臓が騒いだ。

 ほどなくして、パジャマ姿の春人がバスルームから出てくる。平静を装いつつ結婚に伴う手続き関連などの会話を交わしていると、気づけば時刻は23時を回っていた。

 歯磨きも済ませ、いよいよそのときが近づいている雰囲気に、人知れず結乃はゴクリと唾を飲み込む。


「私……先に、寝室に行ってますね」


 ソファーに座るひざにノートパソコンを広げて何やら仕事に関する作業をしていた春人へひと声かけ、そそくさとリビングをあとにした。

 時間が経つほどに、春人の顔をうまく見られない。つい逃げるように廊下へ飛び出した結乃は、火照る頬を両手で挟んでため息をついた。

 寝室は、リビングを出て右側にふたつ並ぶドアの奥の方。ちなみに手前が、春人の書斎だ。
 結乃は寝室に入ると、少し迷った末にベッドボードのダウンライトだけを灯してベッドの端に腰かける。

 暖房のきいた部屋は、熱いくらいだった。エアコンを消そうかどうか迷っているうち、部屋の外から静かな足音が聞こえてきて──結乃の鼓動が、ますます暴れだした。

 開いたドアの向こうから現れた春人と、目が合う。
 思わずパッと逸らして、結乃はうつむいた。ドアを閉めた春人が、ゆっくりと近づいてくる。
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