転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 この展開に備えていたのだと──はしたないと、思われただろうか。結乃はキャミソールやタンクトップなどの肌着は着用せず、パジャマの下に直接真新しい水色のブラジャーを身につけていた。

 白い肌に映える淡い色の下着を目にした瞬間春人が生唾を飲み込んだことに、余裕のない彼女は気がつかない。


「結乃……」


 パジャマのボタンはすべて外されてしまったが、例の痣はまだカップ部分に隠れて見えていなかった。

 熱っぽく掠れた声で名前を呼んだ彼が、胸のふくらみに手を伸ばしかける。

 それを知って、気づけば結乃は声を上げていた。


「むっ、胸は、だめ……っ!」


 言ってからハッとする。ひどいセリフだ。おおよそこれから情を交わそうというこんなシーンで、吐く言葉ではない。

 しまったという表情を貼りつけて自分を組み敷く相手をうかがうと、春人は二、三度まばたきをしたあとコクリとうなずいた。


「わかった」


 あっさりと言い放たれたひとことに、虚を突かれたのも束の間。


「なら、こっちだ」
「え……っあ、」


 つぶやきと同時に春人の右手がスボンの履き口から侵入し、とうとう結乃の一番敏感な部分に触れた。羞恥心に襲われながらも、結乃は為す術もなく呼吸を乱して喘ぐ。

 ──熱い。
 春人が触れている、その場所だけじゃない。全身が熱くて、呼吸も上手くできなくて、どうにかなりそうだった。

 ゆっくりと時間をかけて結乃の身体の強ばりをほぐしていく彼の口から、ふとひとりごとがこぼれ落ちる。


「……狭いな」


 まさか、と思ってすぐそばにある結乃の顔を改めて見つめる。しかし彼女は先ほどから目を閉じたまま与えられる刺激に耐えているため、春人の視線に気づくことはなかった。
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