転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
(……私は、ずっとこの人をハルトと同一線上にみてる)


『ハルト』と『春人』は、別の人間だ。わかっていたはずなのに、本当の意味で理解していなかった。
 今のままだと、まるで『ユノ』と『ハルト』が結婚したようになる。

 それは違う。自分は『白川結乃』であり、『黒須春人』の妻になったのだ。


(『春人さん』と、ちゃんと向き合わなきゃ)


 自分の中できちんと整理がついたら、今度こそ、彼を受け入れて本当の夫婦になろう。

 ひそかに決意してそのまま眠ろうとした結乃は、けれどもすぐに、パチリとまぶたを開けた。


「……あの、春人さん……」
「なんだ?」


 まだ起きていたらしい春人が、結乃の呼びかけに反応してこちらを見る。

 目を泳がせて彼の視線から逃れながら、真っ赤な顔でもじもじと答えた。


「その、ちょっと、あの……し、下着が冷たくて気になるので、着替えてきます……」


 告げられたセリフに春人が固まっているうち、結乃がそそくさとベッドを下りてクローゼットへと向かい、物音のあと慌ただしく寝室を出て行った。

 おそらく、トイレにでも入ったのだろう。次いでドアの開閉音が耳に届き、春人は仰向けのまま思わず両手で顔を覆った。


「……勘弁してくれ」


 あれだけ感じて濡れていたら、たしかに下着も使いものにならなくなっていたかもしれない。
 けど、それを馬鹿正直に申告してくるとは……。

 無意識に自分を煽る新妻の破壊力に悶々とし、結局その後春人がうとうとし始めたのは、明け方近くになってからだった。
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