転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 ディナーの予約までの時間は、結乃の「のんびりブラブラしましょう!」のひとことによりショッピングモールで過ごすこととなった。

 モール内を並んで歩きながら、目についたショップに入って商品を眺めたり、他愛のない会話に笑みをこぼす。

 穏やかでありふれた、平凡な時間。けれども互いを特別に想うふたりはただそうしているだけで、不思議と心が満たされていた。


「はー。さっき会った女の子、かわいかったですねぇ」
「そうだな」


 話しながら顔をほころばせる結乃を、隣を歩く春人は優しく目を細めて見つめる。

 先ほどふたりが立ち寄ったアパレルショップに、自分たちと歳の近そうな夫婦と2歳くらいの女の子の親子連れがいた。

 ベビーカーに乗ったその子は人見知りをしないタイプだったようで、近くで服を見ていた春人と結乃に満面の笑みを向けてブンブンと手を振ってくれたのだ。

 もともと子ども好きである結乃は女の子のそんな仕草にメロメロになり、春人は春人で子どもの愛らしさはもちろん、幸せそうな妻の姿に自然と頬を緩めていた。


(子ども……いつか私にも、できるのかなあ)


 ふと考えつつ、チラリと左隣の人物を盗み見る。

 まだハッキリと、春人とはそんな話をしたことはない。
 ただ入籍の少し前くらいに「結乃はいい母親になりそうだ」と言われたことがあって、そのとき『ああ、将来的には子どもを作る気があるんだなあ』とぼんやり思った記憶がある。
< 89 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop