転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「悪い。ぶつかりそうだったから」
立ち止まって至近距離で落とされた声に、顔を上げる。
たった今結乃をさりげなく危機から救った春人の表情は、相変わらず淡々として掴みどころがない。
けれども自分を見つめるその瞳の奥にたしかな慈しみを感じ、思わず頬を緩めた。
「ううん。ありがとう」
そうして結乃は少しだけ勇気を出して、そのたくましい胸へひたいを擦りつけるように顔を寄せる。
「ふふ。春人さん、せっけんのいい匂いがする」
五月女武修館での激しい稽古のあとシャワーを浴びている春人からは、ふわりと清潔な香りがした。
思うがままにつぶやいてから、自分の言動に恥ずかしくなってそそくさと離れようとする。
けれどもそんな結乃の左手を、春人が掴んだ。
「危なっかしいから、こうしよう」
とっさに顔を上げた先で、彼はどこか熱のこもった眼差しをしていた。
ボソリとささやいた春人の大きな手のひらが、結乃の指を絡め取るように動く。
いわゆる恋人繋ぎとなった自分の左手を見下ろして、かあっと頬が熱くなった。
「は、はい」
うなずいた結乃を確認すると、再び春人が歩き出す。
手が繋がっているため、自然と自分の足もつられて動いた。
こうして春人と手を繋ぐのはバレンタインチョコを渡したあの日以来、まだ2回目だ。慣れない結乃は、手汗が気になって落ちつかない。
そしてどことなく照れた様子でソワソワしている彼女を見下ろす春人も、荒ぶる胸中を鎮めようと必死で平静を装っていた。
立ち止まって至近距離で落とされた声に、顔を上げる。
たった今結乃をさりげなく危機から救った春人の表情は、相変わらず淡々として掴みどころがない。
けれども自分を見つめるその瞳の奥にたしかな慈しみを感じ、思わず頬を緩めた。
「ううん。ありがとう」
そうして結乃は少しだけ勇気を出して、そのたくましい胸へひたいを擦りつけるように顔を寄せる。
「ふふ。春人さん、せっけんのいい匂いがする」
五月女武修館での激しい稽古のあとシャワーを浴びている春人からは、ふわりと清潔な香りがした。
思うがままにつぶやいてから、自分の言動に恥ずかしくなってそそくさと離れようとする。
けれどもそんな結乃の左手を、春人が掴んだ。
「危なっかしいから、こうしよう」
とっさに顔を上げた先で、彼はどこか熱のこもった眼差しをしていた。
ボソリとささやいた春人の大きな手のひらが、結乃の指を絡め取るように動く。
いわゆる恋人繋ぎとなった自分の左手を見下ろして、かあっと頬が熱くなった。
「は、はい」
うなずいた結乃を確認すると、再び春人が歩き出す。
手が繋がっているため、自然と自分の足もつられて動いた。
こうして春人と手を繋ぐのはバレンタインチョコを渡したあの日以来、まだ2回目だ。慣れない結乃は、手汗が気になって落ちつかない。
そしてどことなく照れた様子でソワソワしている彼女を見下ろす春人も、荒ぶる胸中を鎮めようと必死で平静を装っていた。