転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
いつもこうして自分を甘やかす春人に、結乃はどう応えたらいいのかわからなくなってしまう。
これまでずっと、“面倒見のいいお姉さんキャラ”として周囲から扱われてきた。そしてそれは、結乃の性格的にも違和感のない、しっくりする立ち位置だったのだ。
なのにここに来て、こんなにも自分を慈しみ、守ろうとしてくれる存在が現れた。
与えられるその優しさに戸惑いながら、けれどもとっくに結乃の心は春人によって蕩かされ、すでに彼には全幅の信頼を寄せている。
(春人さんになら、私の全部をあげられる)
彼と前世の“ハルト”のことは、完全には切り離せない。
だけど、それでいいのだ。どちらも“ハルト”で、どちらも“春人さん”。ふたりは同じ、ひとつの魂なのだから。
ふたりまるごと、結乃にとって大切な人なのだから。
勇気を出して、結乃は春人の服に手を伸ばす。
こちらに身体を寄せる彼を引き留めるようにクイ、と軽く裾をつまんだ。
「ありがとうございます。……私、春人さんと一緒にいられて幸せです」
ついさっき自分がされたように、内緒話めいた仕草でこっそり耳へ声を吹き込む。
春人は一度硬直して、その後詰めていた息を吐き出すようにふーっと肩の力を抜いた。
カウンターに左の肘をつき、手のひらで顔の下半分を隠したかと思うと、おもむろに視線を外される。
「……俺も、いつもそう思っている」
ポソリと小さくくぐもっていたが、こぼされた言葉はしっかり結乃のもとへと届く。
薄暗い店内でも春人の目もとと耳が赤く見えて、結乃は花がほころぶように笑うのだった。
これまでずっと、“面倒見のいいお姉さんキャラ”として周囲から扱われてきた。そしてそれは、結乃の性格的にも違和感のない、しっくりする立ち位置だったのだ。
なのにここに来て、こんなにも自分を慈しみ、守ろうとしてくれる存在が現れた。
与えられるその優しさに戸惑いながら、けれどもとっくに結乃の心は春人によって蕩かされ、すでに彼には全幅の信頼を寄せている。
(春人さんになら、私の全部をあげられる)
彼と前世の“ハルト”のことは、完全には切り離せない。
だけど、それでいいのだ。どちらも“ハルト”で、どちらも“春人さん”。ふたりは同じ、ひとつの魂なのだから。
ふたりまるごと、結乃にとって大切な人なのだから。
勇気を出して、結乃は春人の服に手を伸ばす。
こちらに身体を寄せる彼を引き留めるようにクイ、と軽く裾をつまんだ。
「ありがとうございます。……私、春人さんと一緒にいられて幸せです」
ついさっき自分がされたように、内緒話めいた仕草でこっそり耳へ声を吹き込む。
春人は一度硬直して、その後詰めていた息を吐き出すようにふーっと肩の力を抜いた。
カウンターに左の肘をつき、手のひらで顔の下半分を隠したかと思うと、おもむろに視線を外される。
「……俺も、いつもそう思っている」
ポソリと小さくくぐもっていたが、こぼされた言葉はしっかり結乃のもとへと届く。
薄暗い店内でも春人の目もとと耳が赤く見えて、結乃は花がほころぶように笑うのだった。