転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
エレベーターが到着し、目の前にあるドアが開いた。
ふたりで中に乗り込むと、斜め前に立った春人が操作盤のボタンを押してくれる。
ゴクリと唾を飲み込んで、結乃はその背中に声をかけた。
「あの、春人さん……私、もう、大丈夫です」
「え?」
唐突に意味不明な言葉を投げかけられた春人は、後ろを振り返って首をかしげる。
ドアが閉まり、エレベーターが上昇を始めた。結乃は彼と目を合わせることができず、視線を泳がせる。
それでも意を決し、もじもじと身体の前で合わせた両手の指先を動かしてしぼり出すような声音で続けた。
「前に『心の準備ができるまで待ってください』って、言ってたこと……その、もう、準備……できました、から……」
話しながら、どんどん結乃の顔が赤くなっていく。
──早まった。いくらなんでも、こんなところで言うことじゃなかった。
今さら後悔しても、もう遅い。チラリとうかがった春人は不意を突かれたように目を丸くしていて、だけど結乃の言葉の意味を理解したのか、徐々にその顔が険しくなっていく。
もしかして、怒ったのだろうか。こんな場所でこんな話をして、はしたないと思われた?
それともやっぱり、もう、彼は……。
結乃が最悪の想像をしかけたところで、春人が大股で一歩こちらへと近づいた。
そのまま、右手首を掴まれて──驚く間もなく強く引き寄せられたかと思うと、背中を壁に押しつけられる。
ふたりで中に乗り込むと、斜め前に立った春人が操作盤のボタンを押してくれる。
ゴクリと唾を飲み込んで、結乃はその背中に声をかけた。
「あの、春人さん……私、もう、大丈夫です」
「え?」
唐突に意味不明な言葉を投げかけられた春人は、後ろを振り返って首をかしげる。
ドアが閉まり、エレベーターが上昇を始めた。結乃は彼と目を合わせることができず、視線を泳がせる。
それでも意を決し、もじもじと身体の前で合わせた両手の指先を動かしてしぼり出すような声音で続けた。
「前に『心の準備ができるまで待ってください』って、言ってたこと……その、もう、準備……できました、から……」
話しながら、どんどん結乃の顔が赤くなっていく。
──早まった。いくらなんでも、こんなところで言うことじゃなかった。
今さら後悔しても、もう遅い。チラリとうかがった春人は不意を突かれたように目を丸くしていて、だけど結乃の言葉の意味を理解したのか、徐々にその顔が険しくなっていく。
もしかして、怒ったのだろうか。こんな場所でこんな話をして、はしたないと思われた?
それともやっぱり、もう、彼は……。
結乃が最悪の想像をしかけたところで、春人が大股で一歩こちらへと近づいた。
そのまま、右手首を掴まれて──驚く間もなく強く引き寄せられたかと思うと、背中を壁に押しつけられる。