桜の下に立つ人
「チームを抜けたら、案外そんなもんだ。特に俺は、一年のときから期待のエースだなんだって持ち上げられて反感買ってたし。俺がいるせいで、監督とか張り切って練習キツくなったし。それで、来年はもっとってみんなで気合い入れたところで、故障で抜けてさ。振り回されたほうはたまったもんじゃないだろ?」

 その長いセリフを、美空はうまく理解できなかった。辛抱強く、何度も何度も頭の中で繰り返してみたけれど、どうしても、納得できなかった。

「……私には、分からないです」
「どうして」

 どうしてだろう。
 悠祐の言葉を呑み込もうとすると、胸の中がとてももやもやする。違う、おかしい、と抵抗する気持ちがある。
 ぼんやりと視線を上方に転じれば、大きな白い雲が夏の空を連想させた。
 写真の中の悠祐はあんなにキラキラと笑っていた。チームメイトだけではなく観客までを巻き込み、盛り上がって一つになった興奮の中心に彼はいた。
 それが、今は誰一人周りに残っていないなんてことが、あるだろうか。

「夏の試合……見に行きました」

 言わないつもりだったけれど、そんなことは無理だった。

「えっ……」
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