その熱、受け止めて〜℃〜
この状況。


だけど…


なんとなく思い出してきた記憶。


カウンターに突っ伏す私の頭を優しく撫でてくれる手の感触。


その時、確かに聞いた気がする彼の言葉ーーー


ぼんやりとではあるけれど私の記憶には彼がちゃんと存在している。


大丈夫。


きっと、上手く行く。


いつだって石橋を叩きすぎて渡るどころか壊してしまってた私だけど、


今なら言える。


君のところへ思い切って飛び込むつもりだからって。


まもなく目を覚ます君に伝えたい想いが溢れそうになるのをあと少しの我慢と飲み込んだ。


熱い想いは喉元から胸へと落ちていく…


ああ、そうか。


まるで一口目のワインみたい。


ふと右手首に何かがついていることに気がついた。


さっきスマホをバシバシと探していたときは気付かなかったんだけどな。


目の前で揺れる細い金色したブレスレットは薄暗い部屋の中でもキラキラと輝いていて…






「あの時飲んだのと同じだ。」







「ん…、あれ、志織さん?」


私のひとり言に漸く愛しい彼が目を覚ましたようだ。


少し予定とは違ってしまったけれど…


それにベッドの中だけれど…


まっ、いっか。


もう石橋を叩くのは止めたんだし。


ごそごそとベッドの中で向きを変え彼の方へと体ごと向き直る。

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