【短編】コイイロ世界
「……………」
無言で自転車を進める恭…
でも小さくだけど
聞こえたよ、
“どういたしまして…”なんて
呟くように言ったアナタの声
言葉にはしないけど
ちゃんと、
届いてたから………
私は恭の後ろ姿を見ながら
小さく笑ってしまった。
恭の作ったおにぎりは
お世辞にも
“おいしい”なんて言えない味
塩辛過ぎるし
固いし
形だってめちゃくちゃ
だけど…
なんだか
“まずい”とは思えないモノだった…
不器用な恭のおにぎりは
とても
不格好だけど
忘れられない
消えない
そんな変わったおにぎり…―――