時が満ちる
ここなら心機一転・・新たな気持ちで勤務できる。
無邪気な子供たちと遊んだり・歌ったりすれば忘れられる・・・
そんな覚悟をして半年が過ぎた。
小さな村の学校は静けさが寂しさに変わった。
変化が欲しい・・・・忘れようと思った傷が疼いた。
そんなある日・・・昔の同僚・・・和樹が遊びに来た。
「小川の水が綺麗だね。小さな村の小川は川底が観えるよ。
メダカや鰌がいるのかな・・・・。」
靴を抜いた和樹はズボンを撒くり上げ小川に入った。
メダカを3匹救い上げて小さなナイロンに袋に水を入れメダカを
入れて真奈美の教室の水槽に移した。
「どうだい・・静かな学校は落ち着くかね。」と聞くと
真奈美は黙って返事をしなかった。
「あれ・・悪いことを聞いたかな? 気になったらごめんな・・
何があったんだよ・・・良かったら話さないか。」
真奈美は実と別れた話からこの学校へ転勤した経緯を詳しく話した。
黙って聴いて居た和樹も同じ傷を抱いて居た。
「実は僕も今同じような状況なんだよ。婚約した幸子が突然他の男性と
結婚したんだよ。 卑怯だろう・・僕になんの連絡もなく大阪の男性に
嫁いだんだよ。 僕も心の整理が出来なくて・・・ふっと君を思い出したん
だよ。」 そう言って大きくため息をついた。
真奈美と和樹は同じような傷を慰め合った。