お前は俺だけのものだ〜私はあなたに相応しくありません
落ち込んだ俺をみくるは覗き込んだ。

「社長?大丈夫ですか」

「みくる」

俺はみくるを抱き寄せた。

「社長いけません」

「落ち込んだ俺を慰めてくれるのがみくるの仕事だから、しばらくこのまま俺の腕の中にいてくれ」

「社長」

みくるの緊張が伝わり、俺の心臓の鼓動が早くなった。

俺は思わずみくるにキスを試みた。
あと数センチと唇が接近した時、みくるは目にいっぱいの涙を浮かべた。

「みくる?」

「社長はどうして社長なんですか?私はどうして妊婦なんですか?もうすこし早く会いたかった」

この時の二人の気持ちは唇の距離より近くにあったのに、それ以上唇の距離は縮まらなかった。

俺は深呼吸をして、みくるの涙を拭い距離を置いた。

「みくる、俺が社長でも、みくるが妊婦でも何も変わらないよ、みくるが俺を好きになってくれさえすれば何も問題は無い」

みくるは潤んだ瞳で俺を見つめた。

そんなみくるの手を握った。

そして、みくるの手にそっとキスをした。

この時みくるの気持ちに変化が現れ始めた事に、俺は気づくことが出来なかった。

みくるは俺を愛し始めていたのだ。





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