お前は俺だけのものだ〜私はあなたに相応しくありません
会社に着くと平野の説教が始まった。

「誄様、遅刻は困ります、明日からお迎えにあがりますので」

「いいよ、遅刻しない様に来るから、大丈夫だよ」

「社用車をお使いにならないのは、理由があるのでしょうか」

俺は平野から目を逸らし、心を読まれない様に努めた。

「理由なんかないよ、とにかくもう放っといてくれ」

俺はすぐに社長室に入り仕事を始めた。

昼休みになり、みくるの朝の様子が気になったので電話をした。

『みくる?大丈夫か』

『社長、どうなさったのですか?』

『社長じゃなくて誄でいいよ』

『誄さん、お仕事中ですよね、私は大丈夫ですから』

俺はみくると話したくて仕方なかった。

あんまりしつこいと嫌われちゃうかな

朝何か俺に言いかけた事を聞いてみた。

『みくる、朝何か言いかけたよな、なんだったの?』

みくるは一呼吸置いて話始めた。

『誄さんは無理していませんか』

『無理?』

『会社に内緒で個人契約までして、私の出産に力を貸してくれるんですか?』

『出産は大変だし、みくるを放っておけないんだ』

『それは誄さんのお母様と重ね合わせて、私に同情しているんじゃないでしょうか』

『同情?違うよ、あ、ごめん帰ったらゆっくり話そう』

俺は平野に呼ばれてみくるとの電話を切った。
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