お前は俺だけのものだ〜私はあなたに相応しくありません
俺は九条家に出向いた。

なんて広い屋敷なんだ。

執事に案内されて、奥の広間に通された。

「ただいま旦那様様を呼んで参りますので、しばらくお待ち下さい」

執事が部屋を後にした。

しばらくして部屋に一人の老人が入って来た。

老人と表現したのは七十は遥かに越えていると感じたからである。

「わしは九条権蔵、誄、お前の父親だ」

その老人はいきなり俺の父親と名乗った。
そして俺に近づき肩を抱いた。

「なんでお袋と結婚しなかったんですか」

親父はしばらく俯いて考えていた。
そしておもむろに口を開いた。

「お前がお腹に宿ったと聞いて、わしは妻との離婚を決意していた、しかし、恵子はわしの立場を考えて身を引いたんだよ」

そうだったんだ、俺はお袋が捨てられたとばかり思い込んでいた。

「わしは恵子の行方を必死に探した、お前のことも気になっていたからな」

俺は俯いて親父の話に耳を傾けていた。

「妻との間に子供は出来なかった、だからなんとしてもお前をいや、恵子を探し出したいと思っていた、わしより先にあの世に行っていたなんて・・・・」

親父は肩を震わせて涙を堪えていた。


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