君はまるで金木犀








夕陽が差し込む16:30の図書室。







僕、城野望はこの場所が一番のお気に入りだ。







校庭からは運動部の掛け声がうっすらと聞こえ、







室内には時計の秒針の音が響いている。







別に特別本が好きなわけではない。







本に囲まれたこの部屋の独特の香り、空気、雰囲気。






それら全てが僕の心のどこかを魅了して、離さない。







この空間を見つけたのはほんの2、3日前である。






その日日直だった僕は、担任から頼まれごとをして普段行くことのない学校の3号棟に足を運んでいた。






その時の帰りに、偶然ここを通りかかって。






足が自ずとここへ動いていた。






扉を開いた瞬間に僕の目にうつったのは、






鮮やかな夕暮れだった。






昨日今日と足を運び分かったことは、






この美しい夕暮れと綺麗に並べられた本のコラボを見ることができるのは限られた25分の間だけということだ。







何も考えずに沈んでいく夕陽を眺めていれば、25分なんてあっという間に終わってしまう。







でもその25分間は、都会の喧騒に疲れきった僕の心を確実に癒してくれていた。






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