一生のお願い
文化祭とノート
「…夏目漱石とかどうかしら」
「いいわね、調べておくわ」
時は過ぎ今は文化祭前。
我が文芸研究部は毎年過去の名作の紹介をまとめ展示している。
もちろん、普段読んでいるBL本ではない。
展示用に皆夏目漱石だとか芥川龍之介だとかの小説を読み資料を忙しなく作っている。
腐バレ防止のためみな必死だ。もちろん私も。
「…んー、あと一作品分スペースが余ってしまったわね…」
掲示板は手書き。
スペースが余ってしまうと修正がきかない。
「…あ、そういえば!楓さん、なにか小説書いてたわよね?」
そう唐突に提案してきたのは、3年生の部長だ。
「…ええ」
「よかったら、あなたの小説紹介しても?」
「…!」
顔が赤くなっていくのがわかる。
周りから見たら(そもそも誰にも見せてないけど)ただの小説に見えるけど、私からしたらラブレターも同然。
そんなものを公開するだなんて…!
「え、と…BLなので…」
「1つくらいあってもいいと思うわ」
「そうですね、文芸研究部らしくていいかも」
「えええ」
なんと、部員みんなが賛成している。
そんな…。
「わ、わかりました…」