一生のお願い

失恋

「こんな所で、なにしてるの?」


突然、後ろから何者かに肩を叩かれた。

この声、聞き覚えがある。


「蕨先生…」

「やほ!文化祭遊びに来たよ」


そう言い、いつも通りの八重歯を見せた笑顔を放つ先生。

周りの生徒たちからは「きゃーー素敵な殿方!」「私にも笑いかけてほしいですわ…!」「今、目が合ったわ!!」などと聞こえてくる。

うちの学校は付属の小学校も女子校なので文化祭にくる男性、特に顔がいいととても目立つ。

そして、いま話しかけられている私もおのずと目立つ。

ちなみにお兄ちゃんも目立ってた。あの人無駄にでかいし。


「一緒にいる方のお連れかしら」

「とても美人…!お似合いだわ」

「2年生の松戸様よ。文芸研究部にいらっしゃる、恋愛において百戦錬磨と噂されてるお方よ」


そういえば前五反野さんも同じようなことを言ってたな。

どこからそんなとんでもない噂が流れたのかしら。


「ははは、松戸さんすごいね」

「本気にしないでくださる?あと目立つので早く校舎に入ってください」

「手厳しいな〜」


校舎に入り、行くあてもないので部室の方へ向かう。

蕨先生も部室の方へ…て、あれ。
< 31 / 60 >

この作品をシェア

pagetop