一生のお願い
「同い年のちーって子。その子はすごく大人しい子で、それが周りには地味に見えたみたいでいじめられてたんだ」

「はい」

「だから、いつしか俺が守りたいって思うようになったんだ。俺がちーの王子様になりたかった。でも」


「ちーの王子様は俺じゃなかった」


「中一の頃入学式の時思い切って告白したんだ。だいぶ強引に迫って無理やりだったけど。それでも3年間は付き合ってた」


「でも卒業式の時、ばっさり振られちゃった。あの子はちょっと人間不信なところがあって、俺は完全に信じて貰えなかった、いや、信じさせることが出来なかった」

「いま、そのちーさんは…」

「ちょっとばかし狂った愛し方をするやつのところにいっちゃった。今日一緒に来てた幼なじみなんだけどね」

「え…」

「はは、難儀なものだよね。こうしてたまにそいつと会って、ちーに何かしでかさないように見張ってるんだ。そんなことしてもちーは俺のとこに来ないのに…」


…。

先生はいつもと変わらないように明るいトーンでそう話した。

でも、表情はとても痛々しくて見ていられなかった。

蕨先生の気持ちは、きっとまだそのちーさんに向いてるんだろう。
< 35 / 60 >

この作品をシェア

pagetop