一生のお願い
「はは、そうだったな」


私は今年高校三年生。もうあの頃みたいに子供じゃない。

お兄ちゃんは家を出ていくし。

だからきっと、忘れられるよね?


「晴人くんとの日々について、いろいろ報告しなさいよ」

「…楓も立派な腐女子になったな。流石俺の妹だ」

「好きであんたの妹になった訳じゃないんだけど。これから離れられると思うと清々するわ」


そもそも好きで腐女子になったわけでもないし。

家から駅までは徒歩5分。

道は閑静な住宅街から徐々に賑やかな駅前に近づいていく。

賑やかと言ってもオフィス街だけど。

私の心はそれと反比例し沈んでいく。

もうすぐ離れてしまう。

本当は行って欲しくないよお兄ちゃん…。

とうとう、高輪ゲートウェイ駅の改札に着いてしまった。


「じゃあな、勉強頑張るんだぞ」

「…お兄ちゃん!」




咄嗟に、お兄ちゃんの腕を掴んだ。


「…?どうした」




ごめんなさい。

最後だけ、わがままを許して。




「…!」





精一杯背伸びをして、頬にキスをした。





「なっ…え、え?」

「じゃあね、クソ兄貴。二度と帰ってこなくていいから」

「あ、ああ?」
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