一生のお願い
6年後


─おぎゃあ!おぎゃあ!


「おめでとうございます!!元気な男の子ですよー!」


助産師さんが、産まれたての命を私のすぐ隣に連れてきた。

まだ目もあかない、小さなその命に先程までの激痛と疲れが一気に吹っ飛ぶ。


「よく頑張ったなー楓!」


そう言い、どこぞの兄貴と同じように私の頭を撫でるのは私の旦那さん。


「俊平…」


そう、あの時の塾の先生、蕨先生だ。

お互い不毛な想いを抱えたもの同士、塾をやめた後も連絡を取り合いそして仲を深めた。
そして去年ついに籍を入れたのだ。


「産まれてきてくれて、ありがとうー!楓も、頑張ってくれてありがとう」

「俊平こそ、そばに居てくれてありがとう」


ねえお兄ちゃん。

私、あの長く辛い片想いから抜け出せたよ。

俊平のおかげでこの想いを断ち切ることが出来たんだ。

だから、お兄ちゃんも晴人くんと幸せになってね。


END
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