一生のお願い
この日は、実家に残っているBL小説を取りに実家に立ち寄った。よくあるだろう、昔読んでいた作品をもう一度読みたくなる瞬間。

だが、どうやら楓とその夫 蕨 俊平 も来ていたようで見慣れない顔ぶれも増えていたことに驚いた。


「おぎゃああああ！」


玄関を開けた瞬間聞こえてきた赤子の泣き声。

慌ててリビングへ向かうと楓と俊平さんがアワアワと赤子を宥めており、この子は間違いなく彼らの子……つまり、俺の甥っ子もしくは姪っ子にあたるとすぐに理解出来た。


「お兄さん、お邪魔してます」

「なっ……なんで帰ってくるのよクソ兄貴」


そしてこの決まり文句である。楓は変わらないな。

それにしてもだ。


「なぜ、子が生まれたこと教えてくれなかったんだ？」

「え？！　楓お兄さんに伝えてなかったの？！」

「……別にいいでしょ」

「おぎゃあああああああ！」


そう話してる間も赤子の泣き声は絶えずこの話は1度保留となった。

赤子の名前は蕨 乙葉(わらび おとは)。非常に元気で可愛い女の子だ。
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