お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
逆プロポーズはお見合いで
ため息をついたら幸せが逃げるなんて、いったい誰が言いはじめたのだろう。
そんなものが漏れるほど落ち込むのがいけないのか。それとも幸せの胞子みたいなものが体の中にあって、それが深い息とともにこぼれてしまうからなのか。
もしもそうだとしたら空気中にたくさんのそんな胞子が飛んでいて、次に息を吸ったときにはほかの誰かが吐き出した幸せを吸い、それはそれで知らない誰かにハッピーをあげているのだから万事オッケーなのではないか。
そんなくだらないことを考えながら、小西果歩は今もまた何度目かのため息を重めに漏らした。
(ほんとに大丈夫かな……)
その原因はこの後に控えている予定にある。
じつはこれから、ある男性に会わなくてはならないのだ。
お見合いと呼ぶほど堅苦しい場をセッティングされたわけではないものの、紹介されるのは初対面の男性。そんな状況は二十八歳にして人生初、緊張せずにはいられない。それも大事な、とても大事なお願いごとを抱えているから余計である。
事の発端は二週間前。勤め先の『荒原不動産』で、果歩が窓口業務を終えたときのことだった。
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