お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
願いが叶った夜


スキンシップは厄介なもので、一度そのぬくもりを知ってしまうと、知る以前よりも寂しさが募るもの。二度目はないのがわかっているから、余計に切なくなる。
寝る場所を別々にしてから五日。果歩は説明のつかない複雑な気持ちを抱えながら、晴臣のマンションに帰る毎日を送っていた。

晴臣の優しい態度に変わりはないけれど、あの夜のような甘いムードはいっさい訪れていない。

夏江の手術が行われたため、果歩はその日仕事を休んで病院にいた。

手術は無事成功。つい先ほど夏江は麻酔から目覚め、ひと口だけ水を飲んだばかり。今はまた眠りに入ったが、先生によればこれでもう心配はいらないという。安心した心の裏側で、これで晴臣と一緒にいる理由がなくなるため寂しい気持ちは隠せない。

両親や妹たちは先に帰り、果歩がひとりで病室にいると、ノックの後にドアが静かに開いた。


「晴臣さん、来てくださったんですか」


今日が手術の日だと伝えてはいたが、ホテルからデザインを依頼されて忙しい彼がここへ来てくれるとは思っていなかった。


「果歩のおばあ様の手術なんだから当然だよ」
< 105 / 151 >

この作品をシェア

pagetop