お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
晴臣の優しさから出た言葉で深い意味はないだろうが、果歩の心は弾む。期待はいけないと頭でわかっていても、気持ちは正直だ。
「ありがとうございます」
「眠ってる?」
「そうなんです。少し前に一度目を覚ましたんですが。でも手術も成功して、もう心配はいらないそうです」
「それはよかった」
晴臣はベッドに近づき、夏江の顔を覗き込んだ。
「顔色もいいね」
「お仕事は大丈夫なんですか?」
八時近くとはいえ、最近は十時過ぎに帰宅することもあるため、また仕事に戻るのだとしたらあまり長くは引き留められない。
「今日は切り上げてきた。果歩はまだここに残る?」
「面会時間も終わりなので、そろそろ帰ろうと思っていたところです」
「じゃあ一緒に帰ろう」
「はい」
座っていた椅子を片づけてバッグを持つ。夏江に「おばあちゃん、また来るね」とひと声かけ、ナースステーションにも「よろしくお願いします」と頼んでから病院を後にした。