お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~

椅子に座ったまま軽い調子で右手をあげたのが幸人だったからだ。この前のことなどおかまいなし。ふたりの間には別れ自体なかったような顔だった。


「どうして」


アパートだってそうだが、どうやってここがわかったのか。もう二度と顔を合わせずに済むだろうと思っていたのに。


「ずいぶんと長い間アパートに帰ってないみたいだからさ」
「……見張ってたの?」


ずっと帰っていないのを知っている口ぶりに背筋をヒヤリとしたものが伝う。わざわざアパートまで何度も足を運んでいたなんて気味が悪い。


「果歩に会いたくてね。ともかく座れば?」
「帰って」


カウンターに両肘を突き、不敵な笑顔を浮かべる幸人にあくまでも冷たく言い放つ。幸人の相手をするつもりはない。


「俺、一応は客なんだけど」
「お客って……」

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