お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
「部屋を探してほしくて来たんだから邪険に扱わないでくれよ」
きっと口実に違いない。
「悪いけど、ほかの不動産をあたって」
「あれ? ここって〝誠実さナンバーワン〟なんじゃないのか?」
幸人は外を見やり、そこにあるのぼりを指差す。
風に揺らめくそれには、幸人の言うように〝誠実さナンバーワン〟という文字が躍っている。荒原不動産の社長のモットーだ。
価格はもちろん、お客様には真摯に対応するようにと、入社したときから言われてきた。痛いところを突かれて言い返せない。
「果歩ちゃん、どうかした?」
やり取りが奥まで聞こえたのか、文代が心配そうに後ろから小さな声を掛けてきた。文代に助けを求めようかという考えが一瞬だけよぎったが、すぐに考え直す。余計な心配をかけるわけにはいかない。
「あ、いえ、大丈夫です」
「そう?」