お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
「やぁねぇ、そんな恥ずかしいからやめてちょうだい」
文代はいつものように手で宙を叩くようにした。
「ハルくんがあそこで現れなかったら、絶対にピンチに陥っていたわよ。おばさんって完全に舐められていたしね」
晴臣も文代も、果歩にとってはヒーローだ。
ふたりがいなかったら、幸人とふたりで地獄に落ちていたかもしれない。
「おふたりとも、本当にありがとうございました」
「いいのよ、果歩ちゃん。憧れの役柄も演じられたし」
小説の登場人物のようになれてうれしかったのと、文代がふふふと笑う。
「とにかく無事でよかったわ。っと、私はそろそろ帰らないと。お父さんがお腹空かせて待ってるから」
思い出したかのように文代は手をパチンと叩き、ソファから勢いよく立ち上がった。
「じゃ、あとはふたりで仲良くね」
ふふふと意味深に微笑んでから、「あ、私が先に帰ってどうするのよ」と肝心なことに気づく。ここの鍵を持っているのは文代だ。
三人は笑いに包まれながら、荒原不動産を後にした。