お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
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「本当に私が入って平気なんですか?」
文代と別れ、晴臣に連れられて果歩がやって来たのは、彼の本社が入居する高層ビルだった。彼に手を引かれてきたものの、部外者の果歩が入っても平気なのか不安になる。セキュリティ上の問題があるだろう。
「警備室にきちんと届け出をしてあるし、役員たちの了承も取ってある。果歩は心配する必要ないよ」
外側がガラス張りになったエレベーターの向こうには、細かい光の屑が散らばる。まるで万華鏡のよう。車のヘッドライトが動くに従い、光の景色が色を変えていく。
午後九時。社内のみんなはもうすでに退勤しているという。
目的のフロアに到着し、彼が果歩を案内したのはオフィスというよりは雑多な感じのする倉庫のような部屋だった。普段、工房として使っているという。
スチール製の棚には資材や工具のようなものが置かれ、広いテーブルにはパソコンが数台ある。そこでデザインをしながら制作をするようだ。
「果歩にどうしても見せたいものがあってね」