お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
大きく踏みだした心
週明けの月曜日。
荒原不動産は社長以下、営業の男性が三人と事務的な仕事をする果歩の五人で運営している。社長が掲げる〝誠実さナンバーワン〟というモットーは、店舗の外にのぼりではためき、高級なタワーマンションや商業ビルなどの大きな物件から、街に根差した小さなアパートまで取り扱いは幅広い。
社長夫人の文代が手伝いで顔を出すことも多く、営業の人たちが出払った後も賑やかな空気だ。
果歩がここで働くようになったのは、新しい部屋を探して来店したのがきっかけだった。道路に面した窓に、間取りと一緒に並んでいた求人の貼り紙。部屋を探すのと同時に『働かせてください』と頭を下げた。
以前いた会社ほどの給料をもらえなくてもアットホームで居心地がよく、お客様に合った部屋を見つける仕事自体もおもしろい。いつかは宅地建物取引士の資格も取りたいと、今は通信教育で勉強中である。
「駅近でバスルームとトイレがべつの1DKですと、だいたいこのラインの価格帯になります」
窓口にやって来たのはOL風の若い女性。実家を出てひとり暮らしをしたいため、部屋を探しているという。
果歩はいくつかの候補物件の間取りをプリントアウトして女性に見せた。
「うわぁ、やっぱりお高いですね」