お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
「こちらこそありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
女性を出入口で見送って中へ戻ると、文代がニコニコ顔で果歩を手招きで呼んだ。
「果歩ちゃん、ハルくんとお付き合いすることにしたそうね」
「ハルくん?」
「七瀬晴臣くんよ」
聞き返した果歩に向かって手招きするように宙を叩く。煽られた風で果歩の前髪がふわりと舞った。
「あ、七瀬さんですね。……って、えっ?」
どうしてそんな報告になっているのか。頭の中が混乱する。
たしかに恋人のふりをして夏江に会ってもらったが、それはふたりだけの間の取り決めであって、文代の耳にまで入るとは考えてもいない。文代にしたら、付き合うといったら、まさに正真正銘の恋人を差しているだろう。決して演技ではない。
「ハルくんから昨日の朝、連絡がきたのよ。素敵な女性を紹介してくれてありがとうって」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「照れなくてもいいのよ、果歩ちゃん」
「いえ、照れる照れないではなくてですね」