お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~

恋人になったのは、あくまでもふたりの間だけの話。文代まで巻き込むつもりはなかった。

(でも、このお煎餅はうれしいな。七瀬さんにもあげたら喜ぶかな)

辛い物好き同士。うれしそうに食べる顔を想像したら、なぜか果歩までうれしくなる。


「それとね、果歩ちゃん、昨夜読んだ小説がすっごくおもしろかったのよ。これなんだけど、果歩ちゃんも読んでみない?」


文代が小脇に挟んでいた文庫本を果歩に突き出す。タイトルや表紙からして、いつものハードボイルド系の小説だ。


「ヒーローが悪いやつを粛々と追い詰めていくのよ。普段は冷静かつ柔和なのに、悪と対峙するときにはスパンと切れ味抜群でね! この助手の彼もいい仕事をするのよー。ヒーローのために身を挺して情報を集めるの。それでね……」


興奮覚めやらぬ様子の文代の話を聞きながら、果歩はこの煎餅をどうしようかと考えを巡らせていた。

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