お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
それを真に受けたら危険なのは、果歩でなくともきっと察知するに違いない。そんな最上級の男がフリーでいるはずはなく、友人の息子という欲目、もしくはオーバーに誇張して言っているのだろう。
話半分に相槌を打ちながら、どう断ろうかと頭を巡らせる。
「ですが、そのような立派な男性に私ではちょっと……」
果歩は、目こそ大きいがとりたてて美人というわけではない。栗色の長い髪はブローが面倒だからと、ハーフアップか無造作にひとまとめ。恋人と別れてからは仕事で生きていこうと、見た目にも以前ほど気を使わなくなっている。第一印象が肝心なお見合いなんてとんでもないのだ。
「なに言ってるのよ。恋をするから綺麗になるんじゃないの。それに果歩ちゃんは十分美人さんよ? そのお相手の隣に立っても申し分ないわ。自信をもって! それにね……」
文代は弾丸口調で一向に話が止まらず、果歩に話す隙をまったく与えない。いつ〝すみませんが……〟と辞退しようかタイミングを見計らっていたが、結局トントン拍子に待ち合わせの場所と時間まで決定。気づいたときには、果歩はなぜか「よろしくお願いします」と頭を下げていた。