お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
「そう言わずに送らせて」
「でも、お忙しいのに」
「俺がもう少し話していたいんだ。シートベルト締めてくれる?」
晴臣の放った言葉がリフレインした。
(もう少し話していたいって……私と? ……どうして?)
浮かんだ疑問に答えは見つからず、うわの空状態でシートベルトを着けようとするが、バックルがうまくはまらない。
(あれ? やだな、なんで……)
ひとりであたふたしていると、それを察した晴臣がすかさず手を貸してくれた。
まったくもって情けない。
「それとさっきから気になってたんだけど、名字じゃなく名前で呼ぼうって決めたよね?」
それも夏江の前だけのはずだけれど、晴臣なら〝呼び慣れた方がいい〟と言いそうだ。
「ごめんなさい」
「謝らなくてもいいよ。でも晴臣でいいから。俺も果歩って呼び捨てにさせてもらうし」
「えっ?」
「嫌?」
首を横に振る。嫌なのではなく照れくさいのだ。
「ならそれでいいね」
晴臣は「決まり」と言ってにっこり笑った。