お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
本格的なお見合いとは違うと言っていた割に、彼女はうぐいす色をした着物をしっかり着ていた。
「果歩ちゃん、こっちよこっち」
大きく手を振り、もういっぽうの手で袖を押さえる。彼女はにこやかに微笑みながら果歩を呼び寄せた。
「お待たせしてすみません」
羽織っていたコートを脱いで腕に掛け、足を速めつつ文代のいるテーブルまで行き頭を下げる。すると果歩に背を向けて座っていた男性がおもむろに立ち上がった。思いのほか高身長のため、果歩が見上げる格好になる。
果歩も一六二センチと女性にしたら低い方ではないが、彼は頭ひとつ分以上高い。おそらく一八〇センチは優に越えているだろう。上質な仕立てをした濃紺のスーツが、彼の体にとてもよくフィットしている。
その彼が振り返った瞬間、果歩は「えっ」と小さく声を漏らしたまま口を半開きにして固まった。
ひと筆で描いたような美しい弧の眉に、黒目がちの柔和な二重瞼。高い鼻梁に自然と口角の上がった唇は真冬だというのにかさつき知らずの潤い具合。それぞれのパーツが見事に調和し、これ以上整いようのない顔立ちをしている。