お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~

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ナナセ・ファニチャーの本社がある高層ビルの一角。そこは晴臣が工房として使っている部屋で、デッサンをするための大きなテーブルやいろいろな資材が雑然と並んでいる。

社長業の傍ら、晴臣は隙を見つけてはここに籠り、一心不乱にデザインしたり試作品を作ったりする時間がなによりも好きだ。
社長に就任して以降なかなか時間が取れないため、オープン間近のホテルからの依頼でラウンジチェアを作るのは立派な口実になる。なにしろ晴臣を名指ししてデザインを発注してきたから。

子どもの頃から絵を描くのが大好きだった。風景画ではなく、身近にある物をデッサンするのが多かったように思う。
目に見えたままを忠実に再現して描いていたが、いつしか〝ここはこうだったらいいのに〟〝こんな形だったらもっとカッコいいんじゃないか〟と自分なりにアレンジし、それを絵にしたためるようになっていった。

デッサンは好きだったが、会社を継ぐのは双子の兄の一慶。誰に言われたわけでもなく、幼い頃からそう思っていた。

ところが一慶は家具にはいっさい興味をもたず、服飾系へ進む道を選び、今では世界的に活躍するファッションデザイナーだ。


「……こうじゃないんだよな」
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