お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
ゆっくり果歩との距離を縮めていこう。そう考えていた矢先、思いがけずマンションへ連れて帰ることになった。
いつも通り紳士に振る舞うつもりが、彼女を近くに感じたらどうにも止められなかった。甘い蜜に吸い寄せられるミツバチのように、果歩の唇に引きつけられてしまった。
理性的な紳士。これまで周りからそう言われてきたくせに。本能を抑え込めなくなったのは初めてだ。
「珍しくスランプですか?」
テーブルに肘を突き、険しい顔をする晴臣に声をかけてきたのは秘書の三倉正巳だ。
晴臣よりふたつ年下の三十一歳。毎日きっちりと七三に分けた黒髪は、整髪料でガチガチに固め、強風が吹いても乱れ知らず。一重瞼が一見冷たい印象を与えるが、愛猫家で猫のことになると顔がデレデレになる。
「そういうわけでもないんだけどね」
「デザインがまとまらないですか?」
「いや、方向性は決まってる」