外階段
 あれほどいじめと(あお)り、中川教諭はなかったように事故を強調した。はたして何人の生徒が信じたか。誰もが事故ではなく、自殺だと思っているので、中川教諭の言葉を鵜呑みにするのだろうか。

 窓は閉め切って風は入っていない。

「わぁ!」

 生徒数名の驚きの声が響いた。

 敏也の席にある花瓶が倒れた。誰かが揺らしたわけではない。この雰囲気の中では不吉な思いしかない。

 沈黙が続いた。

 誰も言わないが、敏也の霊が仕業だと、生徒たちは思っている。

 一人の女子生徒が泣き叫ぶと、他の女子生徒もつられて、泣き始めた。

 中川教諭も生徒をなだめるのに苦労し、落ち着いて帰宅させるまで一時間ほど費やした。
< 18 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop