外階段
 脱出したいと思った。敏也は一刻も早く離れたかった。いつ、不気味な足音が響かないとも言い切れないからだ。

 恐怖のせいで、身体が動かなかったので、ようやく階段のところまでたどり着いた気がした。たかが数十メートルほど距離が永遠に続く気がした。後ろから追ってこないか。それとも前から急に現れないかと色々と詮索してしまい、下を向いた状態で早歩きになっていた。

 踊り場に着くが安堵感はなかった。階段を一段一段、手すりにつかまりながら、やっとのことで一階の踊り場に着いた。

 ここまで来れば助かったような安堵感。逆に教諭に見つかった方がいいのではないかと、職員室に駆け込む事も考えた。

 敏也は大きく息を吐いた。

「こら! 誰だ!」

 安心したのもつかの間だった。敏也の前に人が立っていた。まぶしくて目が開けられなく、手で顔を隠した。懐中電灯を向けられていたのだ。

 怒鳴っている声に聞き覚えがない。教諭ではない。用務員だろう。ならば、身元がわからない可能性もある。

 捕まれば教諭に知られ、説教と罰は確定だ。

 前には行けない。

 敏也は身体を百八十度回転させ、引き返すしか選択肢はなかった。手すりを頼りに階段を駆け上がった。
< 8 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop