昨日、失恋した

 昨日のお昼休みに、男子グループが会話をしている内容が偶然にも聞こえてしまった。

「おい、お前さー、いつも朝早いよなー」
 男子グループの一人が話題を変える様に言った。

「俺たちが教室に着く頃にはいつも机で寝てるもんなー」
 別の男子がその言葉に反応する。

「そんなに眠いのなら、自分の家でギリギリまで寝てれば良いじゃん!」
 次々に男子が話し始める。

「なんか、朝早くから来なきゃいけない理由でもあるのか?」
 何の悪気もなく、一人の男子が彼に質問する。

「そう言えば、あの、ソバカス・メガネ女子、彼女も朝一メンバーなんだってな!」
 彼が質問に答える前に、別の男子が話を割って入る。

「何だよ? その朝一メンバーって?」
 別の男子が不思議そうに聞き返す。

「俺もよく知らないけど、朝早くに教室にいる生徒のことを、先生達は朝一メンバーって呼んでるらしいぜ。だって、そいつらは絶対に遅刻しないから先生から見たら安全パイなんだってさ」
 さっきの男子がぶっきらぼうに答える。

「へー! そうか、俺ら遅刻常連組は先生の目の上のタンコブってことか!」
 回答に納得した男子は、両手を軽く上げて自嘲気味に笑う。

「話を戻すけどよ、お前、本当は、ソバカス・メガネ女子が好きなんじゃ無いのか? だから、眠いのに無理して朝一メンバーになってたりしてな?」
 さっきから絡んでくる男子が核心を突く質問を彼にしてきた。

「よせやい! どうして俺が、ソバカス付き、メガネ女子なんか好きになるはずないじゃ無いか!」
 彼は不服そうに、必死に否定する。

「もっと美人で胸が大きいのならともかく。お前らが考えてるような事は、絶対に無いから」
 少し間を置いてから、付け足すように答える。

「え? そうなのか?」
 意外、という感じで絡んでる男子は素っ頓狂な声を上げる。

「でもソバカス女子、Gカップとはいかないけど、結構ムネあるらしいぞ。脱いだらスゴイって言うタイプじゃ無いか? そこはポイントだろう」
 別の男子は、彼と私を無理やり結びつけようと、色々と言ってくる。

「イヤイヤ! そうやって、俺にソバカス女子を押し付けるのはやめてくれ。金輪際そんなことは無いから」
 彼は、男子達が言うことを、少し困ったように懸命に否定し続けている。

「なんだー、そうかよ。少しぐらい、何処かに浮いた話は無いのかなー。そう言えば、隣のクラスでは……」

 そこから先の会話は、ショックが大き過ぎて聞こえて来なかった。
 耳には入ってきたのだろうけど、私の頭はその前の会話を反復するので精一杯だったからだ。

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