昨日、失恋した

 しかし、事件は昨日の昼休みに起きた。

 俺の友達から『朝一グループ』の話が出てきて、朝の彼女と俺の関係がバレそうになった。そこで、つい、本心では無い、ひどい事を口走ってしまったんだ。

 ―――

「よせやい! どうして俺が、ソバカス付き、メガネ女子なんか好きになんかなるはずないじゃないか!」
 売り言葉に買い言葉で、何も考えずに口走った。

「もっと美人で胸が大きいならともかく、お前らが考えてるような事は、絶対に無いから」
 さらに、どうでも良いことまで口にした。

 ―――

 その時には気がつかなかったが、彼女にはこの言葉が聞こえていたんだろう。午後の最初の授業中に、突然彼女が挙手して先生と一言、二言話したら、急いで教室を出て行った。
 教室を出る後ろ姿がチラリと見えたが、肩が小刻みに震えていた。まるで泣くのを我慢しているような感じだった。

 その姿を見て、俺は直感した。昼間の俺たちの会話が彼女に聞こえてた、と。俺は、物凄く後悔した。授業中の先生の話なんか完璧に無視だ。俺の脳細胞は1000%彼女の事で一杯になっていた。

 彼女が保健室から戻って来たら、真っ先に謝ろう。クラスメートの目なんか気にしている場合ではない。俺の無配慮な一言が、俺の大好きな彼女を傷つけてしまったんだから。早く保健室から戻ってこないかな、授業中に俺が考えるのはその事ばかりだった。

 しかし、結局彼女は状態が回復しないという事で早退してしまった。

 全て、俺の責任だ。朝のひと時の楽しみさえ良ければと思って、本当の事を隠すために、逆に軽はずみな事を言ってしまった、俺が悪いんだ。

 昼休みのあの時に、

「『ソバカス・メガネ女子』可愛いじゃあないか! 俺はあの子が好きだ! おまえら、そんな事もわからないのか?」
 と、素直に言っておけば良かったんだ。

 男子グループの噂なんて、一瞬で終わりだもの。そんな一瞬で終わる噂のために、俺は大好きな人を傷つけてしまったと後悔した。

 明日は、ちゃんと来てくれるかな? 俺の軽はずみな言葉は彼女に許してもらえないかもしれないし、もうこれで嫌われて朝の挨拶もしてくれないかもしれない。
 でも、今日のおわびをキッチリとした上で、改めて彼女と交際させて欲しいと、声にして、打ち明けよう。本当に。
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